お前がいる場所が、好き。Ⅰ
『かざねちゃんのお兄さん、いませんかー?』
わたしは、そう言いながら歩いていた。
『あっ、風音(かざね)!』
少し離れた場所で、わたしと同い年くらいの男の子が、かざねちゃんの名前を呼んでいた。
『おにいちゃん、うわーん!』
風音ちゃんが、わたしと同い年くらいの男の子を見つけては泣きながら走った。
『風音、だから俺についてきてって言ったのにー!』
しょうがないなぁ、という顔つきをしながら風音ちゃんの頭を撫でるお兄さん。
その後、パッとわたしの方を向いた彼。
『君が風音と一緒にいてくれたの? ありがとう!』
『そうなの。わたし、栗原 桜花です』
『俺、寺本 陸男。妹と一緒にいてくれて、ありがとう! 風音もお礼言わなくちゃダメだよ』
自分の妹の背中を少し前に押した彼。
『おねえちゃん、ありがとう……』
涙はまだ完全に拭ききれていないものの、風音ちゃんは天使のような笑顔をわたしに向けてくれた。
『どういたしまして!』
彼女の可愛い天使のような笑顔につられて、わたしも笑って言った。