お前がいる場所が、好き。Ⅰ

池は深くて1人で出られそうになかった。わたしは、必死にもがいた。



『助けて、助けてー!』



けれど、ほとんど人がいなくてわたし達のことなんて誰も見ていなかったから、気づいた人なんてそういないだろう。



『捕まって!』



突然、わたしより少し太い腕が見えた。
わたしはとっさにその腕を掴んだ。その人も両手でわたしの腕を掴み、身体は引き上げられた。



『栗原!』



『桜花お姉ちゃん!』



2つの声がしたので、顔を上げてみると、わたしも、



『ええっ!』



と大声をあげた。



『陸男くん、風音ちゃん……』



そう、わたしを引き上げてくれたのは、風音ちゃんと一緒にいた陸男くんだった。




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