お前がいる場所が、好き。Ⅰ
好きという気持ち
「……陸男くんにこんなに助けられて……。気がついたら、恋してることに気づいたってことなの。」
桜花ちゃんの話を聞いて、わたしは唇を噛み締めた。
「そう、なんだ……」
風音ちゃん、というのは、一匹オオカミと言っていた、寺本の1番上の妹なんだろう。
寺本は1番上の妹は、自分より2歳下と言っていた。風音ちゃんは、彼より2歳下だし、間違いない。
「今思えばわたし、バカだと思うよ、自分のこと」
俯いて、黒く長い髪に隠していた顔が少し上げて静かに彼女は言った。
「こんなバカなわたし、そりゃあ陸男くんに振られる訳だよ」
ざあざあと雨が降り、ガラガラと雷が響く中で桜花ちゃんが言っていることが余計に悲しげに聞こえた。
まるで桜花ちゃんの代わりに、天気が大声をあげて泣いているようだった。
「わたし、泣く資格なんかないのに……。陸男くんは嫌いじゃないって言ってくれたけどっ……。嫌われて当然なのに……」
彼女の小さくて白い顔には、宝石のような涙がまた流れ出た。
わたしは、ハンカチを出して涙を拭いてやろうとすると、
「優しくしないで」
と、桜花ちゃんは少し強めの口調で拒んだ。
今、桜花ちゃんは自分のことを責め続けているに違いない。