お前がいる場所が、好き。Ⅰ
「それは、本当なの?」
怒ってはいないようだけど、お母さんの声のトーンは、低くなっている。
「……え?」
わたしは、タオルを椅子に引っかけながらとぼけたふりをする。
「え、じゃなくて。何でもないって、本当のことを言ってるの?」
お母さんが今、どんな顔で言っているのか見えないけれど、さっきと変わらず真顔なんだろうな。
なんとなく、真顔のお母さんが怖くて、さっきからずっと目を合わせないまま会話をしている。
「嫌だなー。どうして、疑うの? わたし、別に隠してることなんて……」
「_____沙織。お母さんの目をよく見て」
お母さんと目を合わせると、相変わらず真顔のまま、話していたことが分かった。
わたしと同じ、茶色い瞳。そんなお母さんの瞳には、わたしが写っている。