お前がいる場所が、好き。Ⅰ

「沙織……」



お母さんは唖然としている。そりゃあそうだろう。
だってわたしは、隠し事をしていた。


本当のことをすぐに話そうとしないで、今更話した。
わたしは、お母さんを悲しませた。



「本当のことをすぐに話せなくて……。お母さん、本当にごめ……」



わたしは、ごめんなさい、とお母さんに頭を下げようとしたけれど、遮られた。



「_____もうあなたが謝らなくていいの。沙織が自分で湖に落ちた、なんて勝手に解釈して。詳しく聞こうともしないで。ごめんなさい、沙織……」



わたしじゃなくて、お母さんが頭を下げた。



「お母さん……」



わたしは、なんだか複雑な気分だった。分かってもらえて嬉しかったけれど、お母さんがこんなことをする必要があるのかな、と思ってしまった。


お母さんが1番悪いんじゃない。
1番悪いのは、桜花ちゃんの元カレ_____川野くんだ。


川野くんが、桜花ちゃんを池に落として。
桜花ちゃんが、わたしを湖に落とした。


川野くんがあんなことをしなければ、桜花ちゃんはわたしを湖に落とさなかったんじゃないかと思ってしまう。




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