お前がいる場所が、好き。Ⅰ
翌日。昨日のせいか、朝からぼんやりしながら教室で自分の椅子に座っていた。
少し顔を上げると、奈緒と美咲が顔を見合わせていた。が、わたしと目が合った瞬間に、2人はわたしの方へと近づいてきた。
「沙織、元気出して」
いきなり美咲が、いつもの焦げ茶色の三つ編みを揺らしながら言ってきた。
「やっぱり諦めきれないんだね? 未だに好きなんだね?」
奈緒も、わたしの背中をさすった。
「へ? 何が? どういうこと?」
「もしかして、忘れるためにそう言ってる?」
「大丈夫だよ、これもいい経験だよ。沙織には、また好きな人できるって」
美咲と奈緒が何を言っているのかよく分からないけれど、今の言葉でようやくわかった。
2人は、わたしが失恋したと勘違いしている。
「ちょっと待って、違うの!」
わたしは、椅子から立ち上がって言った。
「寺本を桜花ちゃんに取られたんじゃないんだよ」
わたしは、2人に本当のことや桜花ちゃんが教えてくれた、彼女の過去を全部話した。
「ええっ!?」
2人は大きく目を見開いて、驚愕した。
「ちょっ……。ちょっと待って? 色々とついていけない……」
さすがの奈緒も、すぐには理解できないらしい。まあ、そりゃあそうだろうな。
桜花ちゃんに、あんな壮絶な過去があるだなんてわたしも予想外だったんだから。