お前がいる場所が、好き。Ⅰ
「つまり、栗原さんは元カレから本当にひどいことされて寺本に助けてもらった後に好意を寄せたんだね……」
奈緒がそう言いながら、腕を組む。
「うん。きっと元カレと一緒にいるのが辛すぎたから、寺本が余計にいい人だって思えたんだよ」
わたしも、唇を噛み締めて言った。
「それで、栗原さんはずっと好きだったんだね……」
桜花ちゃんに対してあんなに怒っていた美咲も、すごく気の毒そうにつぶやいてる。
「だからって、沙織にあんなことしたのは良くないけど……。元カレが栗原さんにしたことも本当に許されないことだよね」
奈緒の言葉に、うんうん、とわたしは何度も深く頷いた。
「桜花ちゃん、きっとまだ心に傷が残ってるはずだよ」
まだどころじゃない。
桜花ちゃんが川野くんに付けられた傷は、今後も残り続けるものだろう。
「でも、栗原さんは悪い人じゃなかったね? わたし、疑っちゃった……」
美咲が、申し訳なさそうに目を伏せた。
「でも、わたしのためにあんなに桜花ちゃんに対して怒ってくれたんでしょ? 美咲が友達思いだってことは、わたしも奈緒も知ってるよ」
そう、美咲は何も悪気なんてなかったことは知っている。それに、栗原さんの過去を知らなかったんだから、ああなってもおかしいことではない。