お前がいる場所が、好き。Ⅰ
「ねえ。なんで寺本って、そんなに恥ずかしがり屋なの?」
わたしは、シュークリームを食べながら猫なで声で言った。
「……分かんねえよ」
理由は気になったけれど、本人は全然教えてくれることはなさそうだ。恥ずかしがる彼は、かなり可愛いからいいけど。
「お前……」
寺本は、わたしのことを横目で見る。
「ん?」
「慌てて食べる事なんか、するなよ。サンドイッチみたいなことになっても、知らねえからな」
わたしの口から、くすりと笑いがこぼれた。
「人に注意してもらってるっていうのに、何笑ってんだよ」
「なんか、あの時のこと思い出したら、面白くなってきた」
「笑ってるけど、みっともないぞ? 高校生にもなって、食い物が口についてとってもらうな奴」
笑っているわたしとは正反対に、彼の顔は、かなり呆れ気味だ。
「あっ! クリーム落ちた!」
わたしは、寺本の足元を指差して言った。すかさず、彼は自分の足元を見る。
「ふふ、嘘だよ」
わたしがそう言うと、彼も我慢できないという感じに笑い出した。