お前がいる場所が、好き。Ⅰ
彼の顔を見た桜花ちゃんは、いきなりわたしの背中に隠れた。
どうしたの、と聞こうとしたけれどすぐに分かった。
……この人は、きっと桜花ちゃんの元カレだ。そうじゃなかったら、彼女はこんな反応をしない。
「もしかして……川野、修二くん?」
眉間にしわを寄せながら、わたしは彼に聞いた。
「俺の名前、知ってるんだ」
やっぱり、とわたしは思った。
「何しに来たの?」
「悪いけど、あんたの後ろにいるのって俺の元カノなんだよねー。俺、振られた立場なんだよ」
白々しい笑顔で、話す川野くん。
「それで?」
「あんたにゃ恋はどんなものか、知らないだろうな。恋って振られても好きなままなんだよ」
彼はそのまま進んで、桜花ちゃんに手を差し伸べようとした。
「……あなたに桜花ちゃんは、渡せない」
何、今の桜花ちゃんの彼氏みたいなことを言っているんだ、と言われても構わない。
どんなことがあろうと、彼に桜花ちゃんを渡すのは、彼女にとってものすごく危険だ。