お前がいる場所が、好き。Ⅰ
「ふーん。あんたは、桜花の何を知って言ってんだ?」
口角を上げているが、目が笑っていない表情で川野くんは聞いた。
「桜花ちゃんは、あなたと復縁する気は無いよ」
桜花ちゃんが今、どんな気持ちでいるのかは分からない。けれど、桜花ちゃんが川野くんのことが好きじゃないに決まっている。
自分に暴力ばかり振るう人のことを好きになれるわけがない。
「なんで、あんたがそれを知ってんだ? お前、彼氏でもいんのかよ」
「……いたことない」
そう、わたしは今までに彼氏がいたことはなかった。告白をしたこともなければ、されたこともない。
「あんたに、何か分かんの?」
「分かるよ。彼氏いたことないわたしにだって分かる。平手打ちばっかりするような人が誰かの彼氏になる資格なんかない」
恋人、とはどういうものなのか分からないけれど、相手に暴力を振るうような人と付き合っても幸せにはなれないと思う。
そもそも、川野くんは本当に桜花ちゃんのことを好きなのだろうか。
「……は? 桜花、お前……」
彼は、桜花ちゃんに険しい顔を向けた。
「桜花ちゃんに触んないで!」
「だから俺は、こいつの彼氏だった時があんだよ!」
ますます怖い顔をして、川野くんはヒステリックに怒鳴った。
本当に何を言っているんだろう。彼は、まだ彼女に嫌われていることを分かっていないのだろうか。
彼に対して、わたしはますます怒りがこみ上げてきた。
「だからダメ! デートDVしたあなたなら、なおさら触らないで!」
わたしは、彼に負けじと声を荒らげた。