お前がいる場所が、好き。Ⅰ

「増山、栗原」



2人で何やってんだ、と言おうとしているような顔でやってきたのは彼だった。



「寺本!」



「陸男くん!」



わたしと桜花ちゃんが彼の名前を言ったのは、ほとんど同時だった。



「はっ……! お前……川野……」



川野くんを見た瞬間、寺本の表情は凍りついた。



「お? 久しぶりだねぇ、寺本」



愛嬌のある笑顔で、川野くんは言った。まるで、さっきのことが無かったかのように。



「で、3人で何してたんだ?」



「たまたま、ここで会って……」



「そうそう! 寺本も俺と桜花が元恋人同士だったの知ってるだろ? 懐かしくなってさ、思い出話してたんだよ」



わたしの語尾が消えた途端、川野くんの白々しい言葉が響いた。


元恋人同士って、普通思い出話なんてするものなのだろうか。わたしだって、少女漫画や恋愛小説を読んだことはあるけれど、こんなことは絶対にあり得ない。



「嘘だろ?」



寺本が、信じる訳がない。
寺本は、桜花ちゃんが川野くんに傷つけられた事を知っている。そんな寺本が騙されるだなんてあり得ない。




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