お前がいる場所が、好き。Ⅰ
このまま、気まずい空気を流した状態にするのだろうか。
「お前……。元カノから質問されてんのに、なんも答えねえのかよ」
そう思った途端、寺本が沈黙をやぶった。
彼に睨まれても、川野くんは黙ったままだ。
「お前が何も言わないんだったら、もう俺らは行くよ。じゃあな。行こうぜ、増山、栗原」
寺本の言う通りかもしれない。
桜花ちゃんだって、川野くんとは関わりたくないだろうし、一緒にいるとまた彼女がいつ怖い目に遭うか分からない。
寺本は、川野くんをそのままにして歩き出した。
わたしは、桜花ちゃんの手を握ったままだ。
桜花ちゃんは、まだ不安そうな目をしている。
彼女と目が合った瞬間わたしは桜花ちゃんに、行こう、と表情だけで伝えた。
桜花ちゃんは小さく頷き、寺本の後をついて行った。