お前がいる場所が、好き。Ⅰ
君の気持ちが分からない
1週間が経った。
川野くんと会って以来、桜花ちゃんの姿を一度も見ていない。
学校の廊下で何度も見ていたけれど、全く見ない。
今日も廊下に出てみたけれど、ちっとも桜花ちゃんを見ない。
「あなたが沙織ちゃん?」
ふと聞き覚えのある声がして、わたしは顔を上げた。桜花ちゃんとよく一緒にいる、モデルのように背の高い子が、わたしの顔をよく見ながらこっちへ歩いてきている。
「そうですけど……」
「あたし、堤 知世(つつみ ともよ)。桜花とは大親友なの」
堤さん、というのか。全然名前を知らなかった。何か悩み事でもあるのか、少し暗めの顔で声も前と比べて静かだった。
「よく見かけます。えっと、堤さんと桜花ちゃんが話してるとこ」
「知世でいいよ。桜花のことなんだけど……。許してくれて、ありがとうね。桜花、本当はいい子なの」
堤さん、もとい知世ちゃんは相変わらず静かな声で喋り続ける。
「知ってる。桜花ちゃんには、あんな辛い過去があるだなんて知らなかったよ……」
「うん。だから、あんなに男子に人気があっても誰とも付き合おうとしないの」
きっと知世ちゃんも、桜花ちゃんの辛かったことを思い出しているんだろう。それも桜花ちゃんは知世ちゃんの親友。親友がひどい目に遭っていたんだから、彼女も自分のことのように辛かったに違いない。
「そうだよね……」
あれだけひどいことをされたら、他の人と付き合ったりするのが怖くなってもおかしいことじゃない。