お前がいる場所が、好き。Ⅰ
「さおりちゃん! シュークリーム、ありがとう!」
寺本の弟妹が笑った。可愛い。天使の笑顔というのは、こういうことを言うのだろうか。それにわたしは小さい兄弟がいないせいか、こういう笑顔をあまり見ない。だから、こんなに母性本能をくすぐられるのかもしれない。
「どういたしまして」
こんなに喜んでくれると、また何か買ってあげたくなる気持ちになる。この子達の親戚のおばさんになった感じだ。したがって、寺本のおばさんになった感じでもあるということになるんだけど、同級生の親戚になった気分になるというのは、ちょっと気に入らない。
シュークリームを食べ終わった2人は、また湖で水遊びを始めた。
「あの子達は、素直だね」
口角を思い切り上げながら、わたしは言った。
「だって、お兄ちゃんは美味しいって聞かれたら、怒るのに弟さんや妹さんはすごく喜んで答えてくれるんだよ」
「うるせえなあ。別に俺は、素直じゃなくていい」
相変わらず、彼は答えるのが面倒くさそうに言った。
「えっ! いいの? 本当に!?」
「兄弟、全員同じ性格だと限らないの! 全くよー」
寺本は、わたしが1人っ子だということを知っている。