お前がいる場所が、好き。Ⅰ

自分が知らない場所を、わたしは走り続けていた。


最悪だ。
桜花ちゃんのことを振っておいて。自分が守ったら余計に傷つくとか言っておいて。


それなのに髪を撫でる、なんて恋人がするようなことをして。


期待させて、どうするつもりなんだ。


その気持ちと同時に、桜花ちゃんは辛い目に遭ったんだから、ああいうことされてもおかしくない。それなのに、自分は何逃げているんだ、という思いまで込み上げてくる。


訳が分からない。
自分が分からない。


寺本や桜花ちゃんのことが、分からない。


何をすればいいのかも分からない。


とにかく、こんなところにいたくない。


どこか遠くにでも行きたい。


自分が知らないところにでも行きたい気分だ。


そうしたら、今のことを全部ほっぽって、自分でいる必要だってなくなる。



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