お前がいる場所が、好き。Ⅰ

不意に足音が聞こえてきたけれど、そんなのどうでも良かった。


仮に堤さんだったとしても、今更また逃げ切れそうにないし、知らない人だったらわたしのことを無視してくれればいい、と思った。



「え、沙織!?」



びっくりした声が聞こえて、顔を上げると奈緒と美咲が立っていた。



「奈緒、美咲……。なんでここにいるの?」



今の足音って、奈緒と美咲だったのか。



「美咲が勉強で分からないところがあったみたいだから……。今日は、あたしの家にお父さんがいて家に友達を入れちゃいけないって言われたから、図書館で勉強してたの……」



そういうことを言っている奈緒と美咲の手には、手提げバッグが握られている。


2人とも、その手提げバッグに勉強道具などを入れて、図書館へ行ったのか。



「そうだったんだ……」



「そういう沙織は、どうして? 堤さんは?」



奈緒にそう聞かれて、さっきの桜花ちゃんと寺本の姿が頭の中に浮かんでしまい、わたしは深く俯いた。



「何かあったの? 話して!?」



美咲がわたしの顔を見て取って聞いた。



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