お前がいる場所が、好き。Ⅰ
数日後。わたしは、自分の部屋で学校の宿題をしていると、お母さんが入ってきた。
「沙織。そろそろ塾に行く時間よ」
「はーい」
わたしは塾のカバンの中にプリントと勉強道具を持って、部屋から出た。
「行ってきまーす」
玄関で靴を履いてから、わたしはそう言って塾へ行った。塾は、家を出て右方向だ。そんなに遠くない。
中学の入学と同時に行き始めた塾。確か、その頃は塾のいく時間を覚えられなくて遅刻や無断欠席を何回したことか。
「ねえねえ、ちょっと聞いてくれよ」
「んー?」
会話のする方を見ると、一足早く塾に着きそうな寺本と友達だった。
わたしと寺本達は、2メートルくらい離れていて、何を話しているのか全然聞き取ることができない。
「こんにちはー」
寺本たちより少し遅く、わたしは塾のドアを開け、教室に入った。
「沙織ー!」
美咲が小声で手を振ってきている。
そんな美咲に、早いね、とわたしは小声で言った。