お前がいる場所が、好き。Ⅰ
「沙織の好きな人が、他の女の子の髪を?」
ついに、お母さんに気づかれてしまったな。
まあ、こういうのは何事もなかった時にするような質問じゃないからな。
「そういう訳じゃない」と答えても、お母さんはもっと分かりづらくなるに違いない。
「うん、そう」
わたしは、頷いた。
「そうだったのね……。絶対に撫でちゃダメとは言わないわ。けど、その子が好きか好きじゃないか、とどちらかで言えば、好きなんじゃないかしら」
お母さんは、考え込むように言った。お母さんの言葉に、わたしも共感できないことはない。
ただ、寺本は桜花ちゃんを振ったのだから、脈ありというものではないんじゃないかと思ってしまう。
だから、本当に訳が分からない。
「沙織、でもまだ分からないんでしょう? もう少し色々知ってみると良いと思うわ」
桜花ちゃんと寺本の関係を知らないお母さんは、そう言って励ましてくれるけれど、やっぱり不安だった。
「……うん」
わたしは、頷くことしかできなかった。