お前がいる場所が、好き。Ⅰ

「でもわたし……。また殴られるんじゃないかと思うと怖くて……」



泣きそうになりながら言う桜花ちゃんを見ていると、わたしも怖くなる。わたしは、桜花ちゃんが川野くんに暴力を振るわれているところを一度も見たことがないけれど、想像するだけでも痛々しい。



「大丈夫。川野くんが桜花ちゃんに何かしようとしたら、守るから。絶対に守るよ!」



とにかく、もうこれ以上桜花ちゃんを傷つけるようなことをしないようにしたい。いっそのこと、彼女の代わりにわたしが殴られてもいいくらいだ。


どれくらい痛いのかは分からないけれど、彼と付き合っている間、桜花ちゃんはずっと痛みに耐えていた。



「相手は男子だもん、敵わないと思うよ」



「けど、絶対に桜花ちゃんには怪我させないようにするよ!」



「桜花がもう傷つかないなら、あたしはそれでいい。桜花は、川野と付き合っている間、いっぱい我慢してきたんだから!」



知世ちゃんも心強い言葉で、桜花ちゃんを勇気づけようとしている。
桜花ちゃんは下を向いてしまった。表情のない顔で、どう思っているか読み取れない。


数十秒が経って、彼女が小さな顔を上げて黒目がちな瞳をまっすぐわたし達に向けた。



「わたし、修二くんと話すよ」



その一言で、わたしは胸を打たれた。




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