お前がいる場所が、好き。Ⅰ
わたしが部屋を見回しても、奈緒の姿はなかった。
「奈緒は、まだ来てないんだね?」
「そうみたい」
わたしがそう言うと、美咲はなんでもないと言う風に答えた。
「大丈夫かな。もうすぐ先生来ちゃうのに」
時計を見ると、先生が来る時間は迫ってきている。それに、もう奈緒以外は、全員揃っている。
「大丈夫だと思うよ。奈緒は来るって」
授業が始まる1分前に、奈緒は慌ただしく入ってきた。
「奈緒! 今日は、ちょっと遅かったね」
「社会の宿題やってたら、いつのまにかこんな時間になっちゃって……」
奈緒が苦笑いしながら、答えた。
「そうだったんだ」
さすが奈緒。時間も確認できないほど、勉強していたなんて。だらだらと宿題をしていたわたしとは全然違う。
「奈緒って、本当に勉強熱心だよねー」
美咲が口を挟んできた。
そこへ、プリントを持った先生が入ってきた。
「今日は、昨日の応用な」
先生が数学のプリントを配る。
難しそうな問題ばかりだ。学校でも、まだやっていない。
後ろの席で、奈緒が問題を解くシャーペンの音がカリカリと聞こえる。