お前がいる場所が、好き。Ⅰ
翌朝。わたしは教室に入り、自分のバッグをロッカーに入れた途端、
「え、栗原さん来てる!」
という大声が聞こえた。その声から、クラスの大勢の男子が教室から出て行ってしまった。
わたしも廊下に出て、男子達が行った方向を見ると、桜花ちゃんが歩いているのが見えた。
良かった。桜花ちゃん、本当に学校へ行く決心がついたんだね。
「栗原さん、元気になったのー!?」
動物園のパンダでも楽しみにしていたように、騒ぎ出す男子達。
……まあ、栗原さんが学校に来たらこういうことになるのは、予想がついていたんだけどね。好きな人を見ることができて、嬉しくない人なんていないはずだ。
「え、栗原さん来てんの!?」
美咲もびっくりしたように、二重まぶたのくりくりした目を大きく見開いて言った。
彼女の隣にいる奈緒も、驚いたように桜花ちゃんの様子を見ようとしている。
「うん。奈緒の提案、桜花ちゃんに話したんだ。最初は怖がってたけど、決心がついたみたい」
「そっか、良かった」
わたしが言ったことを理解した2人は、まるで本当に桜花ちゃんとは親しい存在のように安心していた。