お前がいる場所が、好き。Ⅰ
わたし達は、夏祭りの場所の中へ入った。
金魚すくい、ヨーヨー釣り、たこ焼き、焼きとうもろこし、りんご飴などの屋台の前には、たくさんの人の笑顔が咲いていた。
「あー、美味い」
「美味しいね」
わたしと寺本は、屋台で綿菓子を頬張りながらそう言った。
「桜花、お待たせー!」
不意に聞き覚えのある声が聞こえて、わたしは声のする方に顔を向けた。
そこには、紺色の浴衣のたもとを揺らしながら歩いている、モデルのように綺麗な子。そう、知世ちゃんがいたのだ。
そんな彼女が歩いている方を見ると、ふわふわした三つ編みの、ピンクの梅柄の浴衣を着た女の子が立っていた。
「栗原さんだ……!」
「本当だ、しかも浴衣だし……」
周りの男子達も、その梅柄の浴衣を着た女の子に釘付け状態だ。梅柄の浴衣を着た女の子は、もちろん桜花ちゃん。
彼女は気付いたのか、急にわたしの方を向いた。
桜花ちゃん、良かったね。
知世ちゃんと一緒なら、きっと笑顔でいられることができるよ。
そう思いながら、わたしは彼女に向かって微笑んだ。桜花ちゃんもわたしに笑顔を返し、その後知世ちゃんと一緒に楽しそうに話しながらどこかへ歩いて行った。