お前がいる場所が、好き。Ⅰ
「お前が言うと、俺が怒った言葉があるだろ。分かるか?」
突然思ってもみないことを問われて、わたしは思わず瞬きを繰り返してしまった。
わたしが言うと、寺本が怒った言葉。
わたしは、記憶を探ってみた。
『寺本ったら、すごい子供っぽい感じだよ! 可愛いー!』
『可愛いねー、寺本は』
あのことを言ったら、必ず彼はわたしを怒っていた。
「”可愛い“?」
「あたり」
わたしが眉を潜めながら口に出すと、月目にした寺本。
「あの”可愛い“って言葉。内心ずっと思ってた」
「え?」
「”可愛い“は、お前が言うことではない。俺が言うことなんだよ」
わたしが言うことではない。それが理由で怒っていたような感じはしなかったと思うけれど。
「寺本が言うこと……?」
「そう、俺が言われるんじゃなくて、お前が言われることなんだよ」
寺本。
そんなことを言うと、この冷たくて青い湖も、熱くなっちゃうよ。
「寺本……?」
「増山……。可愛いのは、お前だからな?」
かっこいい笑顔を見せた彼を見て、わたしは熱いだけでなく、嬉しい気持ちも込み上げてきた。