お前がいる場所が、好き。Ⅰ
エピローグ
夏祭りから、約1週間後。
わたしは、彼と2人で水族館へ行った。
クラゲ、熱帯魚、ペンギンと順番に見ていく。
そうして、コビトペンギンがいるところへ行った。
「あ、コビトペンギンいた! 可愛い!」
「お前また……」
少し呆れ気味で言った彼は、スマホを取り出して画面を見せてきた。
「うっ……!」
そこには、拡大されたコビトペンギンの顔の写真が写っていた。
あの時のように思わず口元を手で覆うと、彼は楽しそうに笑い出した。
「陸男、やめてよ!」
「厳しい現実を見せただけだけど、なんか?」
スマホをしまいながら、意地悪く笑う彼。
「わたしは遠くで見てるだけでいいの!」
「はいはい、分かった分かった」
彼、陸男はそう言ってコビトペンギンの方へ目を向けた。
魚を持った飼育員さんのところへ、ぺたぺたと歩くコビトペンギン達。
やっていることは、前に水族館へ行った時とほとんど変わらない。けれど、あの時と気持ちはどこか違った。