お前がいる場所が、好き。Ⅰ
「沙織、もうすぐイルカショーだぞ」
コビトペンギンのところから離れて、スマホの時計を見ながら陸男は言った。
「オッケー! 行こう!」
わたしもそう言って、彼の隣を一歩一歩と歩く。
わたしは歩きながら、自分より少し背の高い陸男の横顔を見た。
イルカショーを見るのは楽しみだけど、次は彼といつ会うか、というのがもっと楽しみだ。
だって、わたしは彼がいる場所が好きだから。
水族館は、前から好きだ。
けれど、今はもっと好き。
好きな彼がいるから、前よりももっと好き。