お前がいる場所が、好き。Ⅰ

「可愛いねー、寺本は」



わたしが茶化すと、寺本は怒っているのか恥ずかしがっているのか、よく分からない表情をした。



「な、可愛いって、俺が!?」



「そうだよ。弟さんや妹さんも可愛いけど、恥ずかしがり屋のお兄ちゃんもすっごく可愛い!」



わたしが『寺本』ではなく、『お兄ちゃん』と言ったからか、ますます彼は照れた顔になる。



「可愛いとか言うなよ! 俺は、女じゃねえからそんなこと言われても嬉しくねえ! 可愛いなんか言われるような子供じゃねえこと分かってんな?」



しょうがないな。寺本が可愛いという気持ちは、口に出さないでおいてあげよう。
恥ずかしがる男子は、こんなに可愛い。



「にいちゃん、おかおが、まっかっかだ!」



「おねつ、あるの?」



気がついたら、ドーナツを食べ終わった寺本の弟妹がきょとんとした顔で彼を見ていた。



「違うんだ、お前ら。兄ちゃんのことは気にしなくていいから、遊んでろ!」



寺本は、片手を振りながらそう言った。




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