お前がいる場所が、好き。Ⅰ
「本当に飽きないんだよなー、あいつら。あの湖で遊ぶの」
寺本は、湖の場所へ走っていった自分の弟妹を眺めながら言った。
「まぁ、俺もここ嫌いじゃないけど」
「結局自分も楽しみだったんだねー、ここ来るの」
わたしは、寺本をからかうように言った。
「まぁ、そうだけど……。1番楽しみにしてたのは、あいつらって訳」
「実際、自分もああやって水浴びしたいなぁって思ってるんじゃないの?」
「うるせぇ。増山こそ、この頃よく来てんじゃん」
答えるのが、面倒くさそうに彼は言った。
「それは、寺本が弟さんや妹さんに一人ぼっちにされてるから、寂しいんじゃないかなーって思ったから、来てあげてるの!」
「んなこと思ってないし」
「えっ? 顔に書いてあるのに?」
「顔のどこだよ」
もう一度言い返そうと思ったけれど、少し怒り気味の彼が可愛くて、わたしは吹き出してしまった。
「何いきなり、うけてんだよ」
わたしと正反対に、にこりとも笑わずに、寺本は言った。
まるで冗談が通じていないみたい。
本当に可愛い。
「大人気ない寺本が……。ううん、なんでもない」
彼に可愛いと言ってはいけなかったことを急に思い出して、わたしはそれ以上喋ることをやめた。