お前がいる場所が、好き。Ⅰ
太陽が沈みかけてきて、寺本達が家に帰ることにしたので、わたしも帰宅することにした。
「じゃあな、増山」
「うん、じゃあね」
寺本が手を振ってきたので、わたしも手を振り返した。
「さおりちゃん、バイバーイ!」
あれだけ遊んでいたというのに、全然疲れていなさそうに、寺本の弟妹が元気に手を振った。
「バイバイ」
わたしも振り返して、寺本達とは別の道へ行った。
「ふぅー」
わたしは、ため息をついた。空になったドーナツの箱が揺れる。まだドーナツの甘い匂いが残っている。
お母さんは、もう仕事から帰ってきたかな。時計を見ると、4時50分を指している。
お母さんは、いつもこれくらいの時間に帰ってきていて、遅い時は5時20分くらいだ。
となると、帰ってきているか、もうじき帰ってくるかくらいだ。