お前がいる場所が、好き。Ⅰ
家の中に入って、わたしは空になったミニドーナツの箱をゴミ箱に捨てた。
まだお母さんは帰ってきていない。
とにかく、ミニドーナツを喜んでくれてよかった。次もお菓子を持って行ってあげようかな。
ふと、電話の着信音が流れた。
「もしもし?」
わたしは、携帯を出して応答ボタンを押してから、耳に当てる。
『沙織? 美咲だよ、美咲』
「どうしたの?」
『実は、わたし、英検受かったの!』
そういえば、美咲はまた英検を受けるつもりでいた。わたしは英検を受けていないので、実施する日は分からない。いつのまにか実施していたのか。
「そうなの? おめでとう。でも、美咲なら受かると思ってたけどね。英語得意だし」
奈緒は勉強がなんでも出来て、美咲は英語が得意。それに比べて、わたしは特に得意教科なんてない。
『ありがと。沙織は、今日何してたの?』
「寺本と一緒にいた」
『えっ! 同じ塾の、あの寺本?」
美咲の声が裏返った。
「そう。最近、寺本のこと、よく分かってきたんだー!」
『ど、どんな性格?』
美咲のことだから、こういうことには興味あるだろうな。
「結構ツンデレなんだー。可愛かった」
『あの寺本が、まさかのツンデレー!?』
驚くのも無理はないだろう。あんな無愛想に見える寺本のことなんだから。