お前がいる場所が、好き。Ⅰ
全く、そんなに怒らなくたっていいのに、とわたしは思った。
まず、湖で会っていることを言って、あんなに彼が恥ずかしがるとは、思わなかった。
寺本と話している間に疲れがとれたかもしれない。わたしは、携帯を充電して、また勉強を再び開始する。
「沙織。今、入っていい?」
ドアの向こうで、お母さんの声がした。
「うん、いいよ」
わたしが言うと、お母さんはドアを開けて入ってきては、机を覗き込む。
「紅茶、入れてきたわ。今は、塾の宿題をしていたの?」
紅茶を机に置いて、お母さんが聞く。良い香りが漂ってくる。これは、シナモンティーかな。
「ううん。もう宿題は、奈緒と美咲と終わらせちゃった。奈緒に教えてもらったとこを復習しているの」
「そう。疲れたら、これ飲んで落ち着きなさいよ」
紅茶を指差しながら、お母さんは言った。
「うん、ありがとう。お母さん」
わたしのお礼を聞いて、お母さんはすぐに出て行った。