お前がいる場所が、好き。Ⅰ
わたしと美咲は、校舎に入ると、下駄箱で上履きに履き替えている奈緒を見つけた。
「奈緒ー!」
「おはよー!」
わたし達の声に、奈緒は反応してにこりと笑った。
「あ、おはよー」
「ねぇ、奈緒。わたし、英検受かったんだよ!」
美咲は、興奮した声で言った。
「あっ、そうなの? 良かったねー!」
奈緒が小さく拍手をした。
「そういえば、勉強の時に聞きそびれたんだけど、チョコドーナツ、彼は喜んでくれたの?」
前に2人でお菓子を買った時に、奈緒はチョコドーナツを買って、彼が喜んでくれるかどうか、心配そうだったので、わたしは少し気になった。
「うん。すごく嬉しそうに食べてくれたよ」
「何? 2人とも何の話をしているの?」
美咲は、二重まぶたの大きな目をパチパチと瞬きしながら言う。
「あのね、この間、寺本に会いに行こうと思ったんだけど、その前にお菓子を買って行こうと思って、お店に行ったの」
わたしがそう言った後、奈緒が、
「そこで、あたしと沙織が偶然会って、2人でドーナツ買ったのよね。あたしがチョコで沙織がプレーン」
と話の続きをした。
「そうそう。寺本も喜んでくれたよ」
そう言った途端、わたしは寺本との電話で言っていた言葉を思い出した。