お前がいる場所が、好き。Ⅰ

「美咲、寺本に話したんだね? わたしと寺本が最近会ってること」



わたしは、声を小さくして言った。寺本どころか近くには、そんなに多くの人は近くにいないし、そもそも学校が違うので彼がいる訳がないけれど、何故か普通の声では言えなくなった。



「あっ、うん」



「なんか、わたし、寺本に怒られちゃったの。美咲達に話すの、恥ずかしいからやめろって。だから、寺本にこういうことを話すの、彼には秘密ってことでいい?」



わたしが言うと、美咲は「しまった!」という顔をした。



「あっ、わかった! ごめんね、沙織」



両手を合わせて、美咲は言った。



「ううん、いいの。わたしこそ、ごめん。こんな話して」



「美咲、沙織。次、勉強会、いつにしようか?」



話を横で聞いていた、奈緒が言った。



「あっ! そうか。どうしよう」



美咲が言った。
3人で勉強をする日は、月に2回程で日曜日と決めていて、時間は皆が空いている日だ。



「空いてる時間、皆どれぐらいかな?」



奈緒が考え込むように言った。



「うーん……。わたしは、ちょっと分かんないや。お母さんに聞いてみないと」



わたしったら、全然確認をしていない。



「わたしは、1時からずっと空いてるよ」



美咲が言った。



「あたしも1時は空いてる。後は、沙織が1時が空いてるかどうか、だね」



「うん、お母さんに言っておく!」



奈緒の言葉にわたしは、そう頷いて言った。
授業が終わって、休み時間になった頃、わたしはいつもと変わりなく奈緒と美咲と一緒に話すことにした。




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