お前がいる場所が、好き。Ⅰ
「それにしても、奈緒って本当にすごいよね。どうしてそんなに頭いいの?」
美咲がまたうるうるとした目で、奈緒を見つめる。
そんな姿を見て奈緒は、ふふっと笑った。
「頭なんて、よくないよ。あたしだって、よく知り合いに教えてもらってるんだから」
「知り合い?」
奈緒が知り合いに勉強を教えてもらっているだなんて、初耳だ。
やっぱり頭のいい奈緒は、塾だけじゃなくて、他のところでも教えてもらっているのか。わたしと美咲も、奈緒に勉強を教えてもらっているというのに、この違いは何だろう。
「そう。ところで沙織は、どこら辺を間違えたの?」
「わたしは、最後の問題」
わたしは、どんな教科でも、絶対につまづくところがある。
奈緒にいつも、つまづいた場所を教えてもらっているけれど、どうしてもつまづく癖が治らない。
「あー、最後の問題ね! あたしも、そこは土曜日、知り合いに教えてもらってできた感じなのよ。解説は、その知り合いに言われた通りにしちゃうかも」
「いや、大丈夫! それにしても、その知り合いの人、すごいね! いくつぐらいなんだろう」
「20歳だよ」
20歳の人に勉強を教えてもらっているなんて。なんだか、奈緒の周りには学校の先生、塾の先生、そうしてもう1人勉強の先生がいるみたいだ。