お前がいる場所が、好き。Ⅰ
「沙織、入るわね」
家に帰って自分の部屋に入り、約30分経ったところで、お母さんの声の後に、ガチャ、とドアの開く音がした。
「沙織。明日、お母さん仕事で帰るのが遅いの。だから、夜ご飯は自分で作ってね」
「ん、分かった」
お母さんの帰宅が遅い時は、いつもわたしが自分でご飯を作って食べている。
わたしの携帯から、メールの着信音が流れた。
わたしは携帯を取り出して、メールボックスを確認する。
「……寺本?」
寺本からだった。
明日は、別に湖に行く約束はしていない。何の用だろう。
『次の日曜の5時頃、いつもの湖のところに来てもらっていいか?』
5時なら大丈夫だ。勉強会は、3時半までだし、20分前に家を出れば、湖の場所には余裕で着く。
『分かった。いいよ』
わたしは、そう打って、メールを送信した。