お前がいる場所が、好き。Ⅰ
家に向かっている最中、わたしは足を引きずっていた。頰は熱かった。
只今も言えず、わたしは家のドアを開ける。
「沙織! どうしたの?」
赤い頰をしたわたしを見て、びっくりしたお母さんが玄関まで走ってわたしの頰に手を当てた。
「おかあ、さ……」
「顔が真っ赤じゃない。熱? 何かあったの? もしそうなら、お母さんに話して」
お母さんのすごい顔を見てわたしは、はっと我に返った。
「なんでもない。熱じゃない」
わたしは、急いで靴を脱ぎ、身をよじって部屋へと逃げた。
お母さんにかなり心配をかけちゃったな。そりゃあ、そうだよね。
もうすぐ夏だけれど、今日は暑い訳でもないし、家を出るまであんなに頰を真っ赤にしていなかったというのに、帰ったら、あんな顔だったんだから。