お前がいる場所が、好き。Ⅰ
わたしは、ベッドに寝っ転がる。
が、落ち着く訳がない。
寺本が言っていたことは、本当なのだろうか。まだ頰の熱さを感じる。体中から力が抜けている。
というか、こんな格好ではますますお母さんに熱だと勘違いされそうだ。部屋の中にお母さんはいないけれど、あんな風に逃げてしまったんだから、部屋には入ってくるだろう。
そう考えると、一体自分はどういう格好をすればいいのか分からなくなった。椅子に座ったら、机に突っ伏しそうだ。そんなことをしても、客観的に見れば体調が悪そうで、お母さんに心配をかけそうだ。
お母さんに心配させないようにするように、こんなに深く考えるのは初めてだ。
案の定、お母さんは入ってきた。
ベッドに寝っ転がっているわたしを見て、お母さんはまたすごい顔をした。
「って、沙織……。やっぱ熱があるの? 具合悪いの?」
「そ、そうじゃない……」
わたしは、ふるふると首を横に振った。
「いいのよ、無理しなくても。どっか悪いんでしょ?」
「どこも悪くない」
わたしは、また首を横に振った。
「なら、どうして……?」
「いや、本当に大丈夫! わたし、具合が悪いんじゃなくて、その、えっと。ちょっと疲れただけだから!」
わたしが少し焦った調子で言った。