お前がいる場所が、好き。Ⅰ
お母さんは、瞬きを繰り返しながら、
「疲れたって、何かあったの? さっき出かけて行ったみたいだけど」
と言った。
「ま、まぁね。ちょっと体力使いすぎちゃって」
「そう。なら、いいけど。まあ、いいわ。疲れているなら少し休みなさい」
お母さんは、掛け布団をわたしにかけてくれた。
「……ありがと」
お母さんが部屋から出て行ったことを確認して、わたしは頭まで布団に潜った。
寺本。寺本が言っていることは、本当なの。理由が分からなくても、なんだか落ち着かないよ。
「寺本……」
寺本もわたしと同じだった。青いガラスのような湖とは反対の、りんごのような赤い頰。
「あれは……。どういうこと、なの……?」
お母さんもいない、寺本もいない、わたしだけがいる部屋で、そうして、布団の中で呟いた。