お前がいる場所が、好き。Ⅰ
君がいない場所
わたしは、電話番号を打って掛けてみた。
『もしもし?』
良かった、と思いながらわたしは小さく息を吐いた。
奈緒に掛け直してみると、ちゃんと出てきてくれた。
「奈緒」
奈緒がわたしの声に気づいて、
『あっ! 沙織、どうしたの? さっき出なかったけど』
と聞いた。
そりゃあ、訳もなく電話に出ないことなんて、よほどのことがない限りないんだから、聞くだろう。
「ごめん。ちょっと寝てたから、気づけなくて……」
『ならいいけど……』
そういえば、奈緒は何の用でわたしが寝ている間に電話を掛けてきたのだろう。
「それで、何か用があったの?」
『うん。美咲が、体調崩したらしいの』
「えっ、美咲が? なんで?」
あんなに元気だった美咲が、いきなり体調を崩すだなんて、一体何があったんだろう。
『分かんない。だけど、月曜日は学校に行けそうにないし、塾もしばらく休むって』
「そうなんだ。今日は、流石に無理だから、月曜日にお見舞いがてらプリントを届けに行こう!」
『うん。とりあえず、それだけ。じゃあね!』
わたしの返事を聞いた後、奈緒は何かしらのことに急いでいたのか、すぐに電話を切ってしまった。