お前がいる場所が、好き。Ⅰ
寺本がいて、弟さんと妹さんが一緒にいる。この3人は兄弟だ。
ということは、3人兄弟なんだろうか。
「3人兄弟なの?」
わたしが聞くと寺本は、いや、と首を振った。
「4人兄弟。もう1人、2歳離れた妹がいるんだけどさ、一匹オオカミみたいな存在で、一緒じゃないだけ」
わたしは、危うく食べていたサンドイッチを喉に詰まらせるところだった。
兄弟がいないわたしからすると、4人兄弟なんて驚かない訳には、いかない。
わたしは弁当箱の中を見た。サンドイッチがまだ2つある。
わたしは、箱の右側にあったサンドイッチを1つ取って、
「サンドイッチ、食べる?」
と寺本に差し出した。
「あ、悪いな」
彼は受け取ってから、無言でサンドイッチを食べる。
「ついてる」
「へ?」
ついていると言われても、どこに何がついているのか、てんで分からない。
「ここだよ、ここ。パンくず」
彼は乱暴に、わたしの口を手で払った。そうして、パンくずが落ちていくのがわかった。
ついているって、サンドイッチのパンくずのことだったのか。