お前がいる場所が、好き。Ⅰ
「それにしても、美咲が1人で家の中にいたなんて思いもしなかったね。病院には行ったのかな」
美咲と別れて、数十歩歩いたところで、わたしは奈緒に言った。
奈緒は、何かを考え込むように腕を組んでから、
「うーん。お母さんがいないってことは、美咲を病院に連れて行って、検査が終わって家に帰った後に仕事行ったってことかもね」
と言った。
確かにそうかもしれない。高い熱だったら、お母さんもついていかないといけないしね。
「そうだね。熱、ひどそうだったもん。あれで1人で病院に行くのは辛いよね」
「うん」
わたしの言葉に、奈緒は腕を組むのをやめて頷いた。
「塾も、きっと美咲のお母さんが連絡するよね。だから、塾は何も言わなくても大丈夫そう」
確かにそうだ。学校でも美咲のお母さんが連絡したと先生が言っていた。なので、塾の方だってきっとお母さんがするだろう。
「そうだね」
わたしは、奈緒の言葉に頷きながら答えた。