お前がいる場所が、好き。Ⅰ

数時間後、塾に行くと既に奈緒は来ていて、寺本の姿は何故かなかった。


席がふたつ空いていた。美咲と寺本が来ていたら、空いている席も埋まるはずなんだけれど。



「今日は、青柳と寺本が休みと言っていたな。じゃ、プリント配るぞー」



塾の風岡(かざおか)先生が、プリントを配る。
というか、寺本も欠席というのは、どういうことだろう。



「沙織? 沙織、沙織!」



隣の席にいる奈緒が、先生に気づかれない程度の声で呼んでいた。



「どうかした? 手が止まってるけど」



周りの人たちを見ると、確かにみんなはプリントを解くために、手を動かしている。
プリントが真っ白なのは、わたしだけだ。



「ううん、なんでもない。寺本が休みだって聞いたものだから、なんでだろうって……」



「あたしも分かんない。でもとにかく、みんなプリントを解いてるから、沙織も解かないとやばいよ」



「あっ……。そうだね」



わたしはシャーペンを出して、プリントを解き始めた。




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