お前がいる場所が、好き。Ⅰ
わたしは、美咲の家のインターホンを鳴らした。
『はい』
美咲のような声がしたけれど、お母さんかもしれない。美咲のお母さんの声は美咲にそっくりなのだ。
今の相手が美咲だと分かっているのであれば、沙織だよ、と答えたいところだが、お母さんだったらかなり失礼なので、
「すみません、増山です」
と、わたしは応答した。
『あっ、沙織?』
この反応は、美咲だ。やっぱり美咲だったのか。
「うん。そうだよ、美咲」
『今、開けるね』
この声の後、向こうから足音が聞こえた。足音は、どんどん大きくなって、鍵の音がした。
ドアが開いて、美咲の姿がわたしの視界に映った。前と同じように、白いパジャマ姿だ。
「ご、ごめんね。また来ちゃった」
えへへ、と笑いながら、わたしは自分の髪を掻いた。
「平気。あれ? 奈緒は、一緒じゃないの?」
わたしが奈緒と揃って来たと思ったのか、美咲は目を丸くしている。
「ううん。今日は2人で行こうなんて話をしてなかったから、奈緒は帰っちゃった。でも、やっぱり美咲が心配だったから、また来たの」
苦笑しながら、わたしは言った。