お前がいる場所が、好き。Ⅰ

ところで、美咲は前より顔色は悪くないけれど、大丈夫だろうか。



「それより体調は、どうなの?」



「前よりは良くなってきたし、大丈夫だと思う。上がって」



美咲の声は、まだ前と同じでか細いけれど、よく聞くといつもの可愛い声に近づいてきている。



「あっ。じゃあ、お言葉に甘えて」



わたしは玄関で、黒い靴を脱いで美咲の家のリビングへ行った。



「それにしても、沙織1人で来たなんてびっくりしちゃった。奈緒と一緒だったのかと思ったよ」



全く、さっきのインターホンの後には「増山です」というわたしの声しかなかったのに。奈緒と一緒だったら、「丸山です」という彼女の声だってしていた筈だと思うのに。


内心そう思ってしまったけれど、美咲がそう思うのも分かる気がする。



「そうだね。こうやって2人でいること、なかなか、ないからね」



ソファに腰掛けながら、わたしは言った。




< 55 / 198 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop