お前がいる場所が、好き。Ⅰ
ところで、美咲は前より顔色は悪くないけれど、大丈夫だろうか。
「それより体調は、どうなの?」
「前よりは良くなってきたし、大丈夫だと思う。上がって」
美咲の声は、まだ前と同じでか細いけれど、よく聞くといつもの可愛い声に近づいてきている。
「あっ。じゃあ、お言葉に甘えて」
わたしは玄関で、黒い靴を脱いで美咲の家のリビングへ行った。
「それにしても、沙織1人で来たなんてびっくりしちゃった。奈緒と一緒だったのかと思ったよ」
全く、さっきのインターホンの後には「増山です」というわたしの声しかなかったのに。奈緒と一緒だったら、「丸山です」という彼女の声だってしていた筈だと思うのに。
内心そう思ってしまったけれど、美咲がそう思うのも分かる気がする。
「そうだね。こうやって2人でいること、なかなか、ないからね」
ソファに腰掛けながら、わたしは言った。