お前がいる場所が、好き。Ⅰ

2人でソファに座ってしばらく会話を続けていると、鍵の音が聞こえた。



「只今ー」



美咲のお母さんが、帰ってきたのか。
そういえば、奈緒とここに来た時は、今より少し時間が早かった気がする。


この時間帯に彼女のお母さんは、仕事を終わらせて帰ってきているのだろうか。


というか、待って! わたしが勝手に入ってきたことがお母さんにバレちゃったんですけどぉ!



「お帰り、お母さん」



冷や汗をかいているわたしとは正反対に、美咲はのんびりとした声で言った。



「あら、沙織ちゃん。こんにちは」



「こ、こんにちは! あの、勝手に入ってすみません」



わたしが慌てて頭を下げると、美咲のお母さんは笑った。



「いいのよ。美咲のお見舞いに来てくれたんでしょう」



「は、はい」



「心配してくれて嬉しいわ。でも美咲、もうそんなにひどくないのよね」



わたしにお礼を言った後に、お母さんは、美咲に言った。



「うん」



「よ、良かった、です……」



わたしってば、まだ、たじたじだ。奈緒と一緒の方が良かったかな。奈緒と一緒だったら、こんなにたじたじになることなかったと思う。




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