お前がいる場所が、好き。Ⅰ
ところが家庭科の調理実習の当日、美咲はわたしと奈緒に突然こう言ったのだ。
「ど、どうしよう! わたし、料理はあんまりできないから、足を引っ張っちゃうそう。料理って好きじゃないんだよね」
それを聞いたわたしと奈緒は、声を上げて驚いた。
「美咲、料理好きじゃなかったの?」
「うん。2人は、料理好きなの?」
「好きとか嫌いとかの問題じゃなくて、美咲が料理好きじゃないってこと」
「え?」
美咲は、目を丸くして、珍しく太い声を出した。
「意外だね。美咲って、結構料理が好きなのかと思ってた!」
「なんで? わたし、料理の話なんて、今まで一度もしてなかったじゃない」
確かに美咲は、料理の話をしていない。
けれど、料理が嫌いだなんて、想像もしなかった。
「だって……。ねぇ」
「美咲って、すごく女の子らしい物が好きだから、料理が好きだと思ってたの」
言いにくい状態になっているわたしの代わりに、奈緒が言った。