お前がいる場所が、好き。Ⅰ
「さおりちゃん! にいちゃんは、じゅくでは、どんなかんじなの?」
妹さんが、わたしの名前を呼んでくれた。
「教えなくていいよ、増山」
寺本は、横目で見ながら言った。
「そ、そう」
どうして、寺本は隠そうとするのだろう。別に塾での態度は悪くない。少し先生と面白い会話をするだけで、変なところはどこもない。
「ねえねえ! にいちゃん、どうしておしえてくれないの?」
弟さんが、少し怒った口調で言った。
「ど、どうしてって、そんなのお前らに関係ないだろ!」
「にいちゃん、いじわる!」
妹さんも、怒り出して眉を釣り上げる。
わたしは、それを見て口を抑えながら笑った。
「って、おい! 笑うなよ!」
彼は、なんだか恥ずかしがっている。顔が真っ赤だ。
寺本が、幼い子供のように見えた。可愛い。
「だって微笑ましいんだもん」
ここで笑いっぱなしだと、怒られるので、わたしは必死に我慢した。
「はぁ?」
「寺本ったら、すごい子供っぽい感じだよ! 可愛いー!」
「お、お前っ。からかうなよ!」
寺本の顔は、ますます赤くなっていった。