お前がいる場所が、好き。Ⅰ
桜花ちゃんからパンフレットをもらってから、1週間以上経った。
あれ以来、桜花ちゃんはわたしに話しかけてこない。
桜花ちゃんに勧められた塾にだって、当然一度も行っていない。
桜花ちゃんは、そのことについて何も知らないのだろうか。
それとも、もう諦めたのだろうか。
「沙織ちゃん!」
後ろから可愛い声がしたので、振り向くと桜花ちゃんが小走りで近づいてきていた。
「予定なしの日ってある?」
「予定なしの日……。そうだね、明後日なら空いてるよ!」
明後日なら、塾はない。
「明後日? 分かった! 湖の近くで話したいことあるの!」
みずうみのちかく……。
一瞬、わたしの身体から力が無くなった。
わたしが寺本と湖の近くで会っていたことを桜花ちゃんは知っていたということなのだろうか。
「あっ! ごめんね。実は、陸男くんが言っていたの。沙織ちゃんと陸男くんは、そこでよく会うって!」
「そうなんだ……。じゃあ、明後日、そこで話そうね」
わたしは驚きが止まらず、いつものような声が出なくなっていた。