お前がいる場所が、好き。Ⅰ
「でも、そこに通ってる皆は、それらしい子は見なかったって言ってたから」
桜花ちゃんの少し悲しそうな笑顔を見て、わたしはかなり申し訳なく思った。
こういう表情をしているということは、桜花ちゃんはわたしを信じていたということなんだから。
「ごめんね! お母さんとも話し合ったんだけど、わたしはやっぱり今の塾が好きだから」
頭を深々を下げて、わたしは言った。
「何か理由でもあるの?」
「えっと……。いい先生ばっかりだし……」
「他は? 他は?」
待ちきれないという感じで桜花ちゃんは聞いてくるけれど、顔はかなり深刻だ。
「友達も行ってるし……」
「友達って、陸男くん?」
「寺本もそうだけど、他にもいるよ。寺本とは、あんまり塾では話さないけど」
「陸男くんと別の塾、やっぱり嫌?」
桜花ちゃんの声が、少し涙声になっていた。
「そうじゃないけど……」
「だったらいいじゃん! 今週こそ塾の体験行って!」
わたしの両肩を掴んで、必死に桜花ちゃんは叫んだ。