お前がいる場所が、好き。Ⅰ
それに今の彼女の感情は、かなり高ぶっているだろう。わたしの話を最後まで聞いていない。
「ちょっと落ち着いて? 最後までわたしの話を聞いてもらっていい?」
わたしは、桜花ちゃんの手を肩から話した。
「沙織ちゃんとは、すぐに話を終わらせたいの。だから長くしないで」
「は、はあ。今、続けてる塾は、本当に好きだから。体験には行けない、ごめんね」
そう言って、わたしはその場を立ち去ろうとした。
「やっぱり陸男くんがいいの?」
震えた声で聞いてくる桜花ちゃん。
「だから、1番の理由は違うよ……」
「後ろ行って」
桜花ちゃんの言う通り、わたしは一歩後ずさった。
「もっと」
「え? あんまり後ろ行くと、湖に落っこちるから……。行けないよ」
「なら陸男くんとは、もう話さないで」
一歩歩いて、桜花ちゃんは近づいてくる。
「ど、どうして……?」
「聞けば分かるじゃない!」
涙目になって、桜花ちゃんは叫ぶ。
「わたしの方がずっと前から、陸男くんを好きだから! あんたが邪魔なの!」
ふん、という声を出して桜花ちゃんはわたしを突き飛ばした。そのまま、わたしは空気のない、水中へと身体が移動した。