お前がいる場所が、好き。Ⅰ
わたしは急いで湖から出ると、桜花ちゃんが小走りで去っていくのが見えた。
「桜花ちゃん! ちょっと待って、行かないで!」
小走りしていた桜花ちゃんの足は、むしろ速くなって、消えていった。
わたしは、ずぶ濡れになった服を絞る。
鼻がむずむずしてきた。
「はっくしょん!」
くしゃみが出た。これは、急いで帰って身体をあたためた方がいい。
このまま道を歩くと、湖に落ちたことが丸わかりだけれど、その通りだから仕方ない。
それに乾くまで湖のそばで待つ、というのもかなり時間がかかりそうだ。
わたしは、身体を震わせながらよろよろと立ち上がり、家の方向へと行った。